プライム上場メーカーの品質保証にほぼ未経験で転職、在籍4ヶ月で燃え尽きた話
品質管理(QC)を6年やってきました。
3社目の産業機械メーカーの子会社で、検査課にずっといた人間です。
ノギスやマイクロメータで測って、図面の公差に入っているか外れているか。
入っていれば次へ。外れていれば不合格。
それを繰り返していました。
ただ、品質保証(QA)はほぼ未経験でした。
その経験を持って飛び込んだ4社目が、プライム上場の精密部品メーカーの品質保証課です。
年収550万。前職から100万アップ。
数字だけ見れば、うまくいった転職です。
4ヶ月で燃え尽きました。
なぜ辞めたのか。親会社と子会社の選択の話は別の記事にまとめています。
「プライム上場の親会社を4ヶ月で辞め、別の子会社を選んだ理由」
この記事では品質保証のきつさだけを書きます。
品質管理(検査)6年の経験が、品質保証でまるで通用しなかった話です。
品質管理と品質保証は別の仕事
同じ「品質系」でも、品質管理(検査)と品質保証は全く違います。
品質管理(QC)は、測って判定する仕事です。
ノギスやマイクロメータで寸法を測る。図面の公差に入っているか確認する。
合格なら次へ、不合格なら弾く。
答えは数値で出ます。
品質保証(QA)は、書類と折衝の仕事です。
製品にクレームが出れば原因を究明して対策を立てる。工程を変えるなら客先に申請して承認をもらう。協力会社から上がってきた測定記録を確認して承認する。
人と書類と説明で動く世界です。
3社目では検査課で品質管理(QC)を6年やりました。
4社目はプライム上場の品質保証課(QA)。
両方やったので、違いは体でわかります。
QCの根拠は「数値」です。
QAの根拠は「自分で作る」ものです。
仕事の構造が根本から違う。
その認識が固まったのは、入社して1週間もしないうちでした。
検査のリアルは別の記事にまとめています。
「【品質管理のリアル】工場の検査職を6年やった本音」
製品を知らないと一手も打てない
4社目で最初に痛感したのはこれです。
製品を知らないと、仕事が始まらない。
3社目の検査では、製品の構造を深く知らなくても動けました。
図面があれば測れます。公差を見れば合否が出ます。
製品の仕組みを知らなくても、手順を踏めば仕事になりました。
4社目はそうじゃなかった。
客先からクレームが来ます。
この製品のこの部分に問題が出た。原因を調べて対策を立てろ。
でも製品の仕組みを知らないと、調べる方向すら絞れません。
どこに負荷がかかるのか。なぜその部分が弱くなるのか。
それを知らないと、どの図面のどの工程を見ればいいかもわかりません。
ベテランなら、
「ああ、あの工程か」
と当たりがつく。自分にはその当たりがない。
3社目で扱っていた大物の部品と4社目の精密部品では構造が全然違います。
入ってすぐに製品の仕組みを把握しないといけない。
でも体系的に教わる時間はありませんでした。
わからないから、何を調べればいいかもわからない。
調べる方向を決めるために製品を知る必要があるのに、知る手段がない。
糸の端が見つからない状態です。
道具も社内のルールも知らない
道具も同じで、わかりやすいのがピッチの話です。
ある現場対応のとき、先輩に言われました。
「ピッチ持っていけ」
言われるまま持って出ました。外に出てから、課長に指示が来ます。
「会社に電話しろ」
自分はこう答えました。
「ピッチあります」
返ってきたのはこれです。
「本気で言ってんの?」
ピッチは構内専用のPHSです。拠点の中でしか使えない。外ではつながらない。
その常識をそもそも持っていなかった。
製品だけじゃなく、道具の使い方も現場のルールも「知ってて当たり前」の世界でした。
知らないと、当たりをつけることすらできない。動けない。
それが4社目の入り口でした。
周りは新卒からの古株ばかり
製品も道具も知らない。
加えて、聞ける空気もなかった。
品質保証課を見渡すと、新卒からその会社にいる人たちばかりです。
ずっとこの製品を触ってきた人たち。製品の話をすれば共通言語がある。
自分だけその輪の外です。
聞けば答えは返ってきます。
でも、
「そんなことも知らないの」
という空気は確実にありました。口には出しません。でも伝わります。
パワポの資料作りも同じでした。
会議の説明資料を作る場面があります。これも「できて当たり前」で降ってきます。
品質保証は、報告も折衝もドキュメントが中心です。
3社目の検査は測定記録を作る仕事でした。説明資料を作る経験はほぼありませんでした。
新卒から入った人は、その文化を最初から見て育ちます。
中途は、完成された職場にいきなり放り込まれます。
道具も手順も暗黙のルールも、全部「知ってて当たり前」の世界。
そこに知らない状態で入る。
じわじわとメンタルに来ます。
4ヶ月で品証の顔にされる
きつさの本体は、知識がないこと単体ではありませんでした。
知識がないまま、外に対して品質保証の担当者として立たされること。そこです。
4社目での仕事は大きく3つでした。
異常品・クレームの対応
製品に異常が出れば原因を究明して対策を立てます。
関連部門に説明して、必要なら協力会社の指導にも入ります。
外と向き合う仕事です。
クレームが来た時点で、相手は問題を抱えた客先です。
品質保証の担当者として答えを出さないといけない。
製品の仕組みを知らないまま、その役割だけが乗ってきます。
「確認します」は言えます。でも期限は来ます。
知識は追いつかない。
工程変更の客先申請
製造工程を変えるとき、内容を客先に申請して承認をもらう仕事です。
関連部門に確認して、報告書にまとめます。
書類で向き合う。内容の正確さが求められる。
報告書に書く内容が正しいかどうかを判断するのも自分です。
その根拠になる知識が、入りたての自分にはありませんでした。
協力会社の測定記録の承認
協力会社から上がってきた測定記録を確認して、承認します。
間違いがあれば修正を指示します。
承認する以上、内容に責任を持ちます。
でも記録に何が書かれているのか。どう読めば正しいのか。
判断軸が自分の中にありませんでした。
この3つに共通するのは、全部「相手がいる仕事」です。
客先。関連部門。協力会社。
内外に対して説明して、判断を示す。
そして後ろ盾がありませんでした。
課長も先輩も、そのポジションに配属されて1年程度でした。
深いことを聞いても、答えが返ってこないことがある。
それでも客先への期限は来る。協力会社の記録は積まれていく。
面接では「品質保証の経験が浅い」と伝えていました。
それでも入社後は即戦力前提です。肩書きだけは一人前でした。
内側が空っぽなのに、外側の役割だけが乗ってくる
4ヶ月を振り返ると、きつさの正体はここにあります。
製品を知らない。業務を知らない。相談できる人もいない。
その状態のまま、外に立たされる。
品質保証の担当者として、客先にも協力会社にも関連部門にも対応する。
「未経験でQAはきつい」という話はよく見ます。
でも実感で言うと、きつさは仕事量でも残業でもありませんでした。
対応の連絡が来た瞬間、まず「どこを見ればいいのか」から始まります。
それもわからない。
わからないことがわからない。その状態のまま、期限だけが来ます。
渦中にいるときは「どうすればいいのかもわからない」で頭がいっぱいでした。
きつさの構造が見えてきたのは、辞めてしばらく経ってからです。
辞めるまでの経緯はこちらです。
「プライム上場の親会社を4ヶ月で辞め、別の子会社を選んだ理由」
年収を下げて時間を選んだ話はこちらです。
「年収550万 vs 年収480万+定時退勤、選んだのは後者だった理由」
「年収より時間を選んだ人の家計戦略」
QAへの転職を考えている人に一つだけ言えるなら、これです。
その会社・その製品を何年も知っている人たちの中に、知識ゼロで放り込まれます。
それを覚悟してから入るかどうかを決めてください。
自分は覚悟なしで入って、4ヶ月で退職代行に逃げました。
品証→品証ならば製品知識をつければいいので話は変わってきそうですね!