【品質管理のリアル】工場の検査職を6年やった本音
品質保証と品質管理。
名前は似ているけど、別の仕事。
品質保証(QA):クレーム対応や客先折衝が中心のデスク仕事。
品質管理(QC):モノを測って合否を出す現場仕事。
同じ「品質系」でも中身が違います。
そのQA(品質保証)に未経験で飛び込んで燃え尽きた話は別記事に詳しく書きました。
プライム上場メーカーの品質保証で4ヶ月燃え尽きた話
自分はずっと検査=QCをやってきた側でした。
プライム上場の産業機械メーカーの子会社で、検査課に6年いました。
この記事では、その検査の現場のリアルを書きます。
あと、流れで取った非破壊検査の資格が正直そこまで武器にならなかった話も。
工場での検査職を「楽そう」「地味そう」と思っている人に、実際どうだったかを淡々と置いておきます。
品質管理(検査)と品質保証は別の仕事
転職活動をしていると、検査も品質保証もまとめて「品質系」で語られがちです。
でも中身は全然違います。
品質管理(QC)は、モノを測って合否を出す仕事です。
ノギスやマイクロメータで寸法を測る。異常があるのか、図面通りかを判定する。
合格なら出荷、ダメなら弾く。現場に近いところで手を動かします。
品質保証(QA)は、デスク寄りの仕事です。
製品にクレームが出たら原因を調べて対策を立てる。
工程を変えるときは客先に申請する。
協力会社から上がってきた測定記録を承認する。
人と書類と折衝の世界です。
自分は両方やりました。
3社目は検査課でQC。
4社目はプライム上場の品質保証課でQA。
だから違いが体でわかります。
ざっくり言うと、QCは体力、QAは精神。そういう分かれ方をしていました。
品質保証(QA)側がどれだけ精神を削る仕事だったかは、別の記事にまとめています。
「プライム上場の親会社を4ヶ月で辞め、別の子会社を選んだ理由」
検査の現場は「測るもの」で変わる
検査と聞くと、座って手元の部品をちまちま測る姿を思い浮かべるかもしれません。
半分は合っていて、半分は違います。
検査の中身は、何を測るかで大きく変わります。
自分がいた3社目は、大物が多い現場でした。
小さいもので数センチ。
大きいと直径1.3メートル、長さ4メートルです。
そのサイズになると、もう手では動かせません。
床上操作式クレーンで吊って、フォークリフトで運ぶ。
測る前の段取りだけで、それなりの肉体労働でした。
逆に小物が中心の現場なら、話は違うはずです。
台に部品を置いて、ひたすら寸法を測る。
軽作業だけど単調。
そういう現場もあると思います。
ただ自分は大物側だったので、ここはあくまで経験からのイメージです。
意外に思われるのが、検査の現場は暑くないことです。
というより、暑くしてはいけない。
寸法は温度で変わります。
金属は温まれば伸びます。
室温がブレると測定値もブレます。
だから検査室は空調で温度を一定に保ちます。
汗だくの炎天下というイメージとは逆の世界です。
出張もほとんどありません。
基本は、客先で使われた機械が送られてくる。
それを社内で淡々と測る仕事でした。
大物は、測る前の段取りで体力を持っていかれます。
派手さはないけど、地味に疲れる現場でした。
測る道具と非破壊検査(3社目の話)
検査で使う道具は、地味に種類が多いです。
ノギス、マイクロメータ、ハイトゲージ、デプスゲージ、シリンダーゲージ。
複雑な形は三次元測定機で測ります。
道具ごとに当て方やクセが違います。
ひととおり使えるようになるだけで、それなりに時間がかかりました。
自分はもともと不器用です。
おまけに教わる相手が、職人気質の50代。
一度教えたことを一度で覚えないとブチ切れる人でした。
相性は最悪。1年目は怒られっぱなしでした。
3社目では、この寸法検査に加えて非破壊検査もやっていました。
送られてきた機械の表面に、ヒビが入っていないかを調べる検査です。
ただ、全部の機械にやるわけではありません。
客先から要望があったとき。
もしくは目視で怪しい箇所が見つかったとき。
そのときだけ実施します。
やり方は2種類です。
浸透探傷(PT):液を染み込ませて、表面の傷を浮かび上がらせる方法。
磁粉探傷(MT):磁力と鉄粉を使って、表面の傷を見つける方法。
どちらも、目では見えにくいヒビをあぶり出すための検査です。
PTは浸透液が真っ赤で、やっているとメガネまで真っ赤になります。
流れで取った浸透探傷レベル2という資格
非破壊検査には資格があります。
自分は2023年に、浸透探傷試験のレベル2を取りました。
「非破壊試験技術者の資格は転職に役立つのか」
検索するとよく出てくる疑問です。
正直に答えます。
自分の場合、ほぼ武器になりませんでした。
取った動機も、自分から手を挙げたわけじゃない。会社に言われて取りました。
資格を取って何かが大きく変わった記憶もないです。
役に立った場面を挙げるなら2つ。
ひとつは、次の転職先(4社目)で月500円くらいの加給がついたこと。
毎月なので地味に嬉しい!
もうひとつは、面接で話のネタになったこと。
「非破壊検査もやってたんですね」と一言拾ってもらえる。それくらいです。
しかも自分は、非破壊検査の作業そのものはむしろ避けていました。
浸透液や現像液、磁粉を扱うのは手も汚れるし気を使う。
得意分野として売り込んでいたわけでもない。
資格は持っているけど、本業にする気はなかった。それが正直なところです。
資格やスキルを履歴書にどう書いたかは、別の記事にまとめています。
「定時で帰るためにVBAを覚えたら、職務経歴書のネタまで増えた話」
「資格で食える」「手に職」みたいな煽りはよく見ます。
でも自分の浸透探傷レベル2は、月500円と面接の話のネタ。
私の感覚ではそれが実際のところでした。
検査職は楽なのか きついのか
検査職は楽なのか。きついのか。
両方やった感覚で言うと、品質保証よりは楽でした。
品質保証は、クレームの矢面に立たされます。
自分のミスではないのに怒られる。誰かの尻拭いをする。
原因がわからなくても客先に説明しないといけない。
わからないと詰められる。精神的にずっと緊張している仕事でした。
検査にも詰めはあります。
ミスればおっちゃんに詰められる。見落とせば別の課から小言も来ます。
でも品質保証の比じゃない。客先の矢面に立つあの緊張感はありません。
測って、合否を出す。基準は図面に書いてある。
重いし単調だけど、終われば終わりです。家に持ち帰る精神的な宿題がない。
自分は「楽したい」が軸の人間です。
体がしんどいのと、心がしんどいの。
どっちかを選べと言われたら、迷わず体のほうを取ります。
だから今も、検査寄りの仕事を選びました。
年収で言えば、検査側は上がりにくい。
それでも自分は、時間と心の余裕のほうを取りました。
その判断の全体像は、別の記事にまとめています。
「年収550万 vs 年収480万+定時退勤、選んだのは後者だった理由」
まとめ:検査は地味だけど自分には合っていた
検査は、品質保証に比べて地味です。
クレームを解決したヒーローになることもない。
社内で目立つこともない。測って、合否を出して、終わり。
でも自分にはそれが合っていました。
心を削られるより、体が疲れるほうがいい。
地味で目立たない仕事のほうが、自分の「楽したい」軸には正解でした。
資格についてもひとつだけ。
非破壊検査の資格は、流れで取れる範囲なら取っておけばいい。
履歴書の一行にはなるし、面接のネタにはなります。
ただ「これで食える」と期待すると、肩透かしを食らいます。
月500円と、面接での一言。
自分にとってはそれが現実でした。
検査は地味だけど、心は壊れにくい。
品質保証は派手だけど、心が削られる。
その削られるほうのきつさを、次は書こうと思います。